怖いもの。

はじめはガムシャラにやれていたスパーリングが1年半経った今、「やりたい気持ちはあるのだけど、なんだか怖くなってきたんです。」とある会員さんから聞いた。
僕は現役中も「怖いもの知らず」は本当の強さではないと思ってきた。相手を怖いと思う事はなかったが、「負ける事」に対しての怖さがあった。皆の期待を失う事、自分の自信やプライドを傷つけられる事を恐れた。
そして今思うのは、「恐れる事」は全くの無駄じゃないという事。その恐れをどう乗り越えるのかが自分に与えられている課題なのだと捉えるようになった。
一年半という短い間に、その会員さんには大きな変化が現れてきている。それはまじめにボクシングに取り組んでいるからこそ与えられる試練であり、向上していく為の前兆なのだと僕は感じている。
ボクシングは知れば知るほど奥深く難しい。ボクシングの物理的怖さ、心理的怖さも感じられるようになってくる。怖いし、難しいからとボクシングを辞めようとは思わない。「まだまだ先があるんだな~」と大変だと感じながらも楽しく思う。
日々の努力でいつかの日かインスピレーション(気づき)を得て、飛躍的に向上する瞬間がある。今までの世界観がガラッと変わる瞬間だ。そんな瞬間を目指して日々「今できる事」をやっていく事が大切。
「臆病者」と「英雄」の違いは共に小心者(怖がり)なのだけど、いざというときに腹を括れるか、逃げ出すのかが英雄と臆病者の違いなのだと聞いた事がある。豪傑は鈍感な人だというイメージが僕にはある。
そして怖いが故に日々努力する小心者でなければボクサーでもどんな仕事でも大きな成功は難しいように思う。
「怖いもの」があるって人間として向上する為に非常に大切な事なのだと思う。それを乗り越えたとき、きっと今まで見えなかった景色が見えるはず。
   当然、僕も小心者だ。(笑)        マサ