長谷川穂積VSモンティエル。

高橋イズム


はじめに言っておきたいのは、昨日の現役世界チャンピオン同士のタイトルマッチは日本のボクシングでは近年稀に見るハイレベルな試合であったという事。
ジムの営業中ではあったが、素晴らしい技術の応戦に見入ってしまった。互いの駆け引きの引き出しの多さに関心するばかりだった。
三階級制覇のモンティエルは素晴らしいバランスやディフェンス力、リズムの中から多くのフェイントを仕掛けてくる。対する10連続防衛中の長谷川チャンプは、そのモンティエルに負けない掛け引きを使い、徐々にプレッシャーを与えていった。
そのプレッシャーをうまく誤魔化し、ペースを取り戻そうとするモンティエル。それでも徐々にモンティエルの手を封じ、長谷川チャンプがペースを奪っていった4ラウンド。
ところがラスト10秒の合図が、長谷川チャンプの心に油断を生ませた。モンティエルの攻撃の起点となったそのパンチは前のラウンドに長谷川チャンプが打って当てていたパンチ(カウンター)だった。
そこから怒濤のラッシュで試合を決めてしまったモンティエルもさすがだが、長谷川陣営からすればロープに腕が絡まりクリンチもダウンもする事ができなかった事が悔やまれる事だろう。
ボクシングはときに残酷なモノのようにも感じられる。。多くの努力や栄光が一瞬で粉々に打ち砕かれる。だけど逆に言えば、それだけ多くの感動や大きな学びがあるのだとも言える。
ずっと防衛を重ねる長谷川チャンプがモチベーションについての言葉を、よく口に出していたのが気になっていた。
今回のWBOチャンプとの統一戦などしなければ、もっと防衛を続ける事ができただろうし、それによって多くのお金も稼げたはずだ。
何が長谷川チャンプを駆り立てたのか?もっと上のステージで戦いたいという自信も、もちろんあったのだろうと思うが、言い替えれば長谷川チャンプの人並み外れた「向上心」がそうさせたのではないかと思う。
今回の敗戦はペースも掴み、「ここからだ」と手応えを得ていただけに非常に悔しいモノだったと思われる。まさに「不運」とも言える結末だったのかもしれない。
だけど、このまま防衛を重ねる場合と屈辱的な負けを喫してしまった場合では、どちらが人として長谷川選手に大きな学び(向上)を与えるだろう。
「勝てば勝つほど負けが怖くなる」と語っていた長谷川チャンプの言葉を思い出す。僕の経験から言うと「不運」と思えた出来事が後に「幸運」(導き)であった事に気づく事が多い。
これからの長谷川選手には今までにない多くの変化や課題が訪れ、今後の進路などの決断が迫られる事だろう。これが長谷川選手にとって、人としての大きな「向上」となる事に間違いはない。
人は勝つ事や地位や名誉、お金といったモノを得る事が「人生の成功」だと思っている人も多いだろう。しかし本当にそうだろうか。
僕は、この一生で人としてどこまで「向上」できるか?そしてどこまで「本当の幸せ」に近づく事ができるのかが大切な事だと思っている。
そう考えれば、今回の「不運」とも言える敗戦は、実は長谷川選手自身が求めたモノであり、後に「幸運」だったと言える経験になるのだと思う。

長谷川選手のベルトラインにはいつも「大翔」と書かれている。この敗戦から多くを学び、ボクサーとしても人としても大きな飛躍(向上)を見せてほしい。今後の長谷川選手の「大翔」に注目だ。
このハイレベルなタイトルマッチは何度も見返して多くの技術や駆け引きを勉強する事ができる貴重なモノである事以上に多くの事を考えさせられた素晴らしい試合だったと思う。
何が本当の成功で、何が本当の幸せなのか?僕もボクシングや様々な出来事を通じて日々学んでいる。 マサ

  1. 龍之介

    熱い試合でしたね。
    技術的な事はよくわかりませんが、感動しました。

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