転ばぬ先の杖。

昨今、過保護な親が非常に多いように思う。だからといって「放任」が良いわけでもない。
僕もどちらかと言えば、ボクシング指導的にはかなり過保護であったと言える。選手らが失敗しないように、負けないようにと、常々心構えを説き、注意し、指摘し、教え、指導し続けてきた。
ところが、いつからか疑問が沸きだした。これらは「人の為に」と思ってやってきた事だが、実は選手らの自主性や考える力を邪魔していたのではないかと。
「教える」という事に自分本位な考えが含まれていたのではないかと。
詳しく教えれば、とりあえず早くボクシングはうまくなる。だけど、それがボクシングを終えた後、どれだけ役に立つだろうか。
そんな思いから一度は住直への「指導封印」もおこなった。だからといって放任にするわけでもない。自主性や自立を極力邪魔せず、要所要所で僕の持った役割を果たそうという指導法に切り替えた。
「失敗」も「負け」も「過ち」も怖れない思い切った行動が多くの経験を積ませ、その中から人は本当の「学び」を得ていくのだと思う。
僕自身、10代から20代前半まで多くの失敗を味わってきた。誰もそれを教えてくれる人はいなかった。だけど、それがあるからこそ今があるのだと自信を持って言える。
住吉も直人も何度も何度も「過ち」をおかし、「負け」を味わっている。その度に強く「学び」、ひとつ大きく成長する。ボクシングも人生も諦めてやめない限り、この成長はずっと続く。
「転ばぬ先の杖」を与え、「失敗」や「過ち」を避けさせ過ぎず、適度な「失敗」や「過ち」がある方が長い目で見たとき、きっと人としての向上は大きい。
「今」ももちろん大事だが、「10年後」を見据えた指導や生き方を心掛けている。10年後のイメージができれば「今できる事」だってもっと明確に決まり、少々の失敗や過ちにも振り回されずに「これも経験。これも学び。」と俯瞰的に物事を捉え、「因果の法則」を信じ、正しき努力を怠らずに邁進していける。
「経験に勝る学びなし」とはよく言ったものだ。         マサ