ファイティング貴章の勇気と感動。


準決勝はサウスポーを相手に勝利を収め、ライバルとの決勝戦へ駒を進めた貴章だが、まだまだ課題も不安も残るデキだった。


3年生は最後となる福岡県大会。そして決勝。

相手はこれまで二度の対戦で、惜敗してきた全国選抜3位のライバル選手。

貴章より上背があり、鋭い右ストレートで準決勝をRSCで勝ち上がってきた。

彼の存在が大きく、まだ貴章は一度も全国大会に出た事がない。

最後に、達成する喜びと華やかな全国大会出場という経験を味わせてやりたい。

一週間後に興行が迫る中、僕も今できる限りのサポートをした。


1ラウンド。いつもは少し固く、実力を出し切れていない貴章がこの土壇場に来て動きがいい。

礼儀正しく生真面目なキャプテン貴章。皆からの信頼も厚い。

そんな貴章が高校ボクシング2年間の「悔しさ」や「辛さ」、「成長」や「楽しさ」、それらの集大成をここに表しているように感じた。


しかし、2ラウンド。右ストレートが得意な相手に中間距離でスイッチを入れてしまうというミスを犯し、痛恨のダウンを奪われる。

しかし、このダウンが本来、貴章の持っているファイティングスピリットに火を着けた!


試合が再開されると走って行き猛攻を仕掛けたのはダウンを奪われた貴章の方だった。


3ラウンド。ここが勝負になる!勝負!ジャッジの印象もある。ここは倒し返すしか勝ちはない!


2ラウンドのダウンから火が着いている貴章の猛攻は止まらない。

これが本来の貴章の持ち味であり、資質だった。


そんな中、左フックで改心のダウンを奪う!!

この大会。試合中は指示を出さず、自身の力で、自身の発想で全国への扉を開いて欲しいという思いだったが思わず「貴章!!チャンス!!走れーーっ!!」と叫んでしまった。


ダメージが残るうちにもう一度いいパンチを入れれば試合が終わる。

しかし、相手も簡単にそうはさせない強敵。


2分3ラウンドの激闘が終わり、判定を待つ。

貴章の成長が見られた素晴らしい試合だった。

どんな結果も受け入れられる。そう思って判定を待った・・


只今の競技、青コーナー・・とアナウンスが聞こえた瞬間、豊国ボクシング部、杉本先生、僕、皆が拳を突き上げて泣いた!

会場にいる方々にも伝わったであろう、この感動と、このドラマ。

勝って男泣き。

2年間、悔しい思いを何度もしてきた。高い壁に諦めの気持ちも湧いたかもしれない。

しかし、そんな思いにも負けずに貴章は勝った。

皆、貴章という人間を見てきた。だから心の底から応援し、他人の事が自分の事のように喜べ、涙した。

センスのある選手や幼少からボクシングを始めたいい選手もいる。だけど、観ている人を感動させ、仲間達に心底喜んでもらえる選手がどれだけいるだろう。

人を応援する大切さ、努力、苦難に負けない、成長、公平、諦めない勇気、真の勝利、仲間との友情、青春・・

              高校ボクシングのあるべき姿がここにあった。


豊国学園ボクシング部キャプテンとして後輩達に勇気と感動を与えた。


3年生トリオと共に戦うのはこの日が最後。

「あいつならきっとやってくれると思ってました」。(^^) 彼らの友情はずっと続く・・

6月末に九州大会、夏にはインターハイが控えているファイティング貴章がどこまで行けるか?

                少年よ!大志を抱け!!