バーニング石井(関門JAPAN)VS川名北斗(白井・具志堅)
試合前はいつも不安や怖さから闇に落ちるバーニング石井だけど、今回の闇からはそう簡単には抜けられない理由があった。
三年前に負った目の怪我が急速に悪化したと告白があった。
これまで以上の不安と怖さ。
「逃げたい」
その葛藤は当日の昼まで続いた。
怖さを克服する為には「勇気」と「闘志」がいる。
アクセル住吉が石井のセコンドに付く理由を話した。
住吉は石井から貢献心や思いやりを学び、住吉の強気や前向きさを石井に伝える。
ずっと「お前たちを足して二で割るとちょうどいいんやけどな~」と言ってきた。
「だから俺がセコンドに入ったら、直人は勝てますね。だから入ります」
その言葉を石井に伝えると
「会長。やります」
石井のマインドが切り替わったのを感じた。
ホール入りし、リングチェック。
アマチュアの頃からずっとやってきたルーティーンだ。
門司フィットネス時代から、この三人で約11年間戦ってきた。
バンテージを巻き・・
ミット打ち。
石井に最後の気合いを入れた。
関門JAPANのテーマ曲で、自らが望んだ聖地後楽園ホールのリングへ向かう。
バーニング石井リングイン!!
最後に「後楽園ホールに勇気と感動!」でスイッチは入った。
テイル渥美戦でも使った合言葉はKR!絶対勝つ!!
序盤相手の動きを探っていく。
長身の川名選手にリードジャブで打ち負けていない。
今、「穏やかな心」がテーマの僕も、「これが直人の最後の試合」と思うと自然と指示に熱が入った。
心配した第1ラウンドをいいペースで終え、ラウンドが進む。
相手のパンチはまだまだ生きているが・・
僕には勝ち筋が見えた。
「よしよし!ナイスラウンド!いけるぞ!」と石井を奮起させる。
当初「4ラウンドまでは頑張ります。それ以降は目の状態次第で棄権します」と言っていた石井。
そんな弱気な状態でリングにあげてもいいのかと僕も葛藤した。
攻撃は最大の防御。弱気は最大の敵!
4ラウンドを終えて聞いた。
「まだやれるか?勝つんか?」
「やれます!勝ちます!」
持ち前の闘志に火は着いている。
石井のボクシングキャリア、人としての成長がまだ若い川名選手を徐々にリードしていく。
ここからがバーニング劇場!
赤コーナー側の川名コールに負けじと青コーナー側からバーニング石井応援団以外にも多くの石井コールが巻き起こり会場は大盛り上がり。
最後のラウンドへ。
「俺たちの11年を全部出そう。」涙を堪えてそう言った。
苦しかった事。楽しかった事。悔しかった事。嬉しかった事。11年間いろんな事があった。
アマチュアでの活躍。プロでの苦悩。
成長と感動。
人の為に。感謝。素直さ。使命。強気。
そして勇気。
ボクシングから学んだ事をすべて出せ!
カンカンカンカン!
最後のゴングが鳴った。
終わった。
石井に言った。
「勝ち負けはもうどうでもいいな」
「どうでもいいです」
僕らは勝った。
自分に。課題に。怖さに。
とどのつまり人生は自分との闘い。
誰と比べる事もなく、誰の評価を気にする事なく、すべては自分次第。
ジャッジ、まず一人は「赤コーナー、川名!」
もう一人は「青コーナー、バーニング!」
わーっと歓声が起きた。
そして最後の一人は「76対76」
ジャッジ三者三様のドロー。
結果に不服はない。
両者の手が上がり、赤コーナー側、青コーナー側後楽園ホールすべての人がこの熱き闘いを称えて大きな拍手をくれた。
「なるほど。これがバーニング石井の最後の結果か」そう思った。
弱さ、優しさ、葛藤、努力、勇気、激闘
そして感動。
関門の激闘王バーニング石井はロッキーそのもの。
これまでずっと応援してくれた石井家の皆さん、大分の皆さん、下関、関門の皆さん
お父さん。
応援本当にありがとうございました。
関門JAPANのみんな、射場くんもありがとう!
公約どおりバーニング石井は、東京後楽園ホールに関門JAPANの勇気と感動をしかと伝えました。
アマチュアで6年。プロで5年。
志半ばではありますが、目の怪我によりバーニング石井は引退します。
ネガティブで頑固で素直さがなくてたくさん失敗して怪我して本当に手の掛かる選手でした。
だけど一番人として成長したのも、僕に感動を一番くれたのも石井でした。
11年間お疲れさま。感動をありがとう。