最後の練習試合。

靖也、喬之、啓助の豊国トリオの県大会前、最後の練習試合が熊本の東海第二高校であった。
ジムの外での彼らをどうしても観ておきたかった。一番の心配は自分の力が出せない状態になっている事。
若貴を連れて朝七時に門司を出発し、東海第二高校に9時半に着いた。
早速、練習試合が始まる。一試合目は彼らの今の状態をよく観察した。1年生の啓助は怖いモノ知らずで勢いがあって非常に良い。ジムで習ったコンビネーションもバンバン打つ。まだキャリアはないが自分の力が出せているから問題はナッシング!
問題があったのは靖也と喬之。靖也は僕が実業団で数日いない間に何があったのかと聞くぐらいに気持ちが抜けたボクシングになっていた。喬之は「勝ちたい!」という気持ちが焦りに変わりボクシングが荒れていた。
二人を皆から離れた場所に連れて行き、話しをする。どこまで胸に響くのかは本人がどれだけ「勝ちたい!」と切に望んでいるのかに尽きる。
話しは終わり、二人は目を閉じ、意識を集中させている。
そして練習試合二試合目が始まった。靖也は1ラウンド良い状態ができるものの2ラウンドに入り、集中が切れる。自分の心をコントロールする事に関しては50点。あと二週間!最後の県大会に向けて頑張れ!
喬之の二試合目は一階級上の九州チャンピオン。数日前にはかなりやられたらしいが、そんな事は関係ない。ボクシングは自分との戦いだ。喬之が自分の力を充分に発揮できれば、そう簡単に負けてしまうとは到底思えない。
顔つきはいい。集中できている。1ラウンド、自分のボクシングを取り戻した。反応もいい。2ラウンドもその動きは続き、ほぼ互角の勝負になった。
喬之の心のチャンネルが変わった事を確信できる内容だった。ボクシングは自分との戦いだという事が身に染みて分かった事だろう。勝つ為に必死に頑張っている喬之だからこそに起きていた不調だったのだと思う。だからこそすぐにチャンネルが変えられたのだとも思う。
「熊本まで来てくれてありがとうございました。」と改めて言う喬之に涙が出そうになったので軽く聞き流した。県大会まであと少し・・頑張れ!        会長

靖也。あと二週間、悔いのないように頑張れ!

喬之。自分の中にある壁を乗り越えろ!

啓助。元気があって調子はいい。もっといろいろな相手に対するボクシングを覚えておこう!

おまけ。若貴見学。