靖也決勝戦試合内容。

靖也の決勝の相手も強敵だ。国弘、靖也共に三年生に与えられる課題は大きい。「相手は敵じゃない。課題なんだ。越えられない課題は与えられない!自分との勝負やぞ!」と皆に言う。
靖也初の決勝戦の舞台は応援も観客もいつもと違う。そんな中で靖也のスイッチを入れる事ができるのかどうかが、靖也の、そして僕の課題だった。
国弘が負けた直後の試合で動揺もあったのか、昨日までの元気がない。第1ラウンド、動きの硬さや勢いの無さが目立った。指示を飛ばすが反応は悪い。

要所要所でカウンターや良いパンチは決めるものの勢いが足りない。

相手選手のプッシュ気味のボクシングに崩されてしまう。準決勝までの靖也が消えてしまった。

勝敗は判定へ。靖也の手が上がる事はなかった。
熱意、意欲がないと二年半、怒られ続けてきた靖也がこの大会では大きな成長を見せた。しかし決勝では力を出せずに敗退する。これもまた必然であったと僕は思う。
頑張った故の感動と悔しさ、両方を学んだこの大会に意味はあった。「靖也はもう辞めさせましょう」と杉本先生に訴えた僕の判断は間違っていたようだ。
今大会は靖也にとってかけがえのない程の良い経験になった事だと思う。頑張った褒美に九州大会への出場が与えられている。この経験をこれからの人生に生かし、そして最後の九州大会での優勝を目指してほしい。
「よし、靖也、次はプロで頑張ろうな!」と握手を求めると、決して手を出そうとしない靖也に笑った。   マサ