喬之、決勝戦試合内容。

啓助の試合が終わり、すぐに気を取り直して喬之の試合。僕はこの決勝に来るまでの喬之のキャプテンとしての成長を見続けていた。
アップの時からの落ち着きと周りへの気配り。寺中への応援では誰より大きな声が出ていた。そして啓助のサポートも。

「自分の力(心)」をうまくコントロールできずに苦しみ抜いてきた1年間。そこから次々と成果を表し、二年の新人戦では九州大会を制し、全国選抜大会では準優勝を果たした。そんな喬之の最後の県大会となる大事な決勝戦だが、不安は感じられず、どこか頼もしい。

1ラウンド。落ち着いて自分のリズムを取りながら、よく相手を見て攻撃を仕掛けていく。相手も東福岡の3年生で気合いは入っているが、喬之の横の動きについていけていない。するどいカウンターが決まり、早々とダウンを奪う。
2ラウンドに入り、相手も必死に食い下がる。それでも引き出しの多さで喬之が一枚上回り、パンチを当てていく。危ないシーンもうまく対処し、流れを渡さない。そして以前はできなかった自分の距離を常にキープしたボクシングを見せ続けた。
3ラウンド。「やはり、3年生だな~」と思わされる冷静且つ柔軟な試合運びを見せる。相手の出鼻に鋭い左ストレートが決まり、再びダウンを奪ったところでレフリーが試合を止めた。

3ラウンドRSC勝ち。キャプテンとして、ボクサーとして、人としての大きな成長を感じさせた。後輩達に3年生でキャプテンとしての試合(姿)を見せてくれた。
約三年間の高校ボクシング人生。前半は苦しみ、多くの失敗と苦さを味わった喬之。それらを糧とし、今がある事は間違いない。
人は失敗する。それなら、誰より早く多く失敗し、改善し、同じ失敗を繰り返さなければ確実に向上していける。
『ボクシングは人生の縮図だ!』と僕は言う。人生もボクシングも、早く多く失敗し、改善し、向上していく事が本当の成功や幸せへの一番の近道なのかもしれない。ボクシングはそれを短期間で体験する事ができる素晴らしい競技だと思う。
喬之は変わった。そしてボクシングも変わった。これからの人生も大きく変わっていく事だろう。まだ九州大会もインターハイも国体も残っている。
喬之のボクシングには、まだまだ向上の余地がある。それでもボクサーとして、人として、これからも失敗を怖れず、失敗を糧に向上していける強い人間でいてほしい。    会長
PS 3年生、寺中の頑張りと喬之の落ち着いた試合運び。2年生啓助と1年生つかさの学びの敗戦。インターハイ福岡県予選には毎年幾つかのドラマが起きるが、今年もやはり「感動」と「大きな学び」があった。
ボクシング指導者としても、人としても、このインターハイ福岡県予選は非常に価値のあるモノだと思う。学校ボクシング指導者の皆様に、そして選手らに感謝。     マサ