全日本選手権大会、中国ブロック予選。3

すべての試合が終わり、住吉がもどしていると関係者が教えてくれた。僕らは原因が分かっているけど、関係者の方々は試合で頭部に打撃を受けた影響ではないかとかなり心配されているようで申し訳なかった。
試合で頭部にパンチはほとんどもらっていないから、もどすのは減量の影響。何度も見てきたから間違いない。

検診を受けるが、やはり頭部に問題はない。

表彰式が終わり、直人に言った 「階級替えんか?」 と。これは今年に入って一度は僕が直人に言っていた事だった。
減量が苦手な住吉。減量をうまくやる直人。体格差はほとんどない。
以前はフェザー級に直人、ライト級に住吉で、実業団も社会人もW優勝してきた。住吉はライト級で二度全日本三位に入賞もした。
そんな折りに、世界基準に合わせるという事で日本のアマチュアボクシングからも「フェザー級」がなくなった。
全日本優勝を目標にしてきた住吉はライト級にこだわり、バンタム級までは落とす事が無理だと言う直人はライトの一つ上のライトウエルター級に二階級上げる事となった。
大きな相手に負けないように「体作り」に励み、減量がない分の負を背負おうと練習もいつも以上に追い込んでやった。
そして迎えた 「山口全日本」 で直人はライトウエルター級三位に入賞した。
今年に入ってからの一番の目標はやはり 「山口国体」 で結果を出す事。 
僕は結果主義ではない。人生にとって一番大切な事は「人として」成長する事だと常々思っている。
それでも、この山口国体は、今までお世話になってきた山口県の方々の為に、応援してくれた人達の為に、なんとしても結果を出したい。
以前に 「階級替えんか?」 と言ったときは 「それは住吉さんの課題に対する逃げになりませんか?」 と直人は言った。
この件については直人に決定権があるので、その意見を受け入れ、今までと変わらぬ階級で全日本、そして山口国体に挑む事になった。
しかし、結果は住吉の減量失敗により、予選落ち。11月の全日本、初めて一人で試合に出る事になった直人が言った。     
      「山口国体、階級替えましょう」 
直人の課題である「柔軟性」。それがボクシングに表れてきた事に伴って思考にも前向きな柔軟性が表れてきているように感じられる。
今年最大の目標 「山口国体」 が10月。 全日本が11月。この全日本の意味をずっと考えていた。
当初、考えていた山口国体への布陣が何のわだかまりもなく決まった。県連に階級の入れ替えは可能かと問い合わせると、明日が締め切りだとの返答があった。導きだと思った。
帰りの車中、何度も三人で話し合って山口県連に階級の変更決定を伝えた。

大会終了後、約2時間。この調子で動けない住吉。自身の課題克服も大切だが、この状態・・階級変更は妥当だろうと思う。動機は応援してくれる「人の為に」 今回はこの一点しかない。
この階級変更の結果がどう出るのかは、これからの僕ら次第。
住吉は己の課題(減量)に打ち克って山口国体に出る為に、一週間後の全日本社会人大会に向け、慎重に調整中。(階級の変更はできない)
強い思いが心と体の動きを堅くさせてしまう直人は 「前向きな柔軟性」 を課題とし、ボクシングを通じ、人としての成長を目指す。久しぶりの減量をする山口国体や11月の全日本もきっと直人にとって価値ある経験となる事だろう。
僕は、そんな二人を指導しながら、共に自身に与えられる課題から逃げず、誤魔化さずに乗り越えて成長していく。
        すべてに意味があり愛がある
僕らは、それぞれの未熟さをチームとして支え合いながら 「人の為に」 自分自身を向上させ続けていく。 マサ
PS ジムの皆さん、山口県連、岡山県連、中国ブロックの皆さん、ありがとうございました。

おまけ。